長野県のりんご生産状況と特徴
農業大国長野県の農産物を代表するりんご。ここでは長野県におけるりんごの生産状況・特徴についてご紹介します。
長野のりんご
生産動向
長野県は、農業生産額の約2割を果樹が占めており、果樹作付面積のうち、53 %をりんごが占め、りんご生産量は約11万トンと全国2位のりんご生産県です1)。しかし、近年、生産者の高齢化や資材の高騰、販売価格の低迷などが影響し栽培面積が大きく減少するとともに、りんご消費の低迷や自然災害などの影響によって生産量は平成9年の22万7千トンの約50 %にまで減少しています。
品種の変遷
生産量が低迷しているリンゴですが、特に、主力の‘ふじ’の生産量は減少が著しい状況です(図1)。一方、1990年代半ば以降に品種登録された‘秋映’、‘シナノスイート’、‘シナノゴールド’など、図1のその他に含まれる長野県育成品種の生産量は増加傾向にあります2)。
図1.長野県のりんご品種別収穫量(1990~2020年)1)
加工用りんごの状況
生産されたりんごの多くは生食用として販売されますが、生産量の約1~2割は加工用として出荷され、その大半が果汁に加工されています。また、国産りんご果汁は、近年アジア各国を中心に輸出が増えています。令和3年の年間輸出量は約2,945トンで平成28年の約1,356トンよりも2.2倍増加しており3)、今後も輸出の増加が見込まれます。
機能性表示食品
機能性表示食品制度とは
平成27年4月に施行された「機能性表示食品制度」は、事業者の責任において食品の安全性や機能性に関する科学的根拠に基づき、機能性を表示することができる制度です。販売前に安全性及び機能性に関する科学的根拠などの情報を消費者庁へ届け出をするもので、サプリメント、加工品のほか、生鮮食品でも表示が可能です。制度の開始から約8年が経過し、機能性表示食品に対する消費者の認知度が向上し、市場は拡大傾向にあり、新しい商品の届出が増加しています。
りんごにおける機能性表示食品
りんごでは、機能性関与成分としてポリフェノールの一種であるプロシアニジンについて肥満予防や脂質代謝の改善効果が報告されています。プロシアニジンはカテキンまたはその異性体であるエピカテキンが複数結合したフラボノイド類の一種で、結合位置や結合数、カテキン類の組合せによって多くの異性体が報告されています4)。リンゴ由来プロシアニジンについて農研機構が行った研究レビュー(SR)では、「リンゴ由来プロシアニジンは内臓脂肪を抑制する」ことが示されています5)。
農工研では
低迷している長野県のリンゴ産業はもとより、日本国内におけるリンゴ産業の活性化のため、リンゴ由来プロシアニジンの分析技術の規格化ならびに機能性表示食品の開発等を関係機関とともに支援してきました。
引用文献
1) 農林水産省、作物統計(https://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/sakumotu/)(2023年3月28日現在)
2) 長野県、長野県果樹農業振興計画書(令和3年3月)(https://www.pref.nagano.lg.jp/enchiku/sangyo/nogyo/engei-suisan/documents/kajyu_keikaku_r12.pdf) (2023年3月28日現在)
3) 財務省、貿易統計(https://www.customs.go.jp/toukei/srch/index.htm) (2023年3月28日現在)
4) Shoji, T., Mutsuga, M., Nakamura, T., Kanda, T., Akiyama, H., Goda, Y., Isolation and Structural Elucidation of Some Procyanidins from Apple by Low-Temperature Nuclear Magnetic Resonance. J. Agric. Food Chem. 51, 13, 3806–3813 (2003).
5) 農研機構、農林水産物のSR(システマティックレビュー)https://www.naro.affrc.go.jp/org/nfri/yakudachi/sys-review/index.html(2023年3月28日現在)
この記事は果汁協会報No.776(4月号-2023)「りんごジュースの機能性表示食品の開発とプロシアニジン分析法の標準化」 (滝沢ら)の報文を基に一部変更して記載しております。